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手術
精巣から流出した細かな静脈(蔓状静脈叢)は次第に合流して内精索静脈となります。
この内精索静脈を血液が逆流して、蔓状静脈叢に血液がうっ滞したのが精索静脈瘤です。
精索静脈瘤は男性不妊の原因になると一般に考えられています。
その理由は
事例が多数報告されているためです。
また、精索静脈瘤は健康には影響しませんが、陰嚢の不快感や痛みをきたすことがあります。
精索静脈瘤の病態
一般的に精索静脈瘤の手術の適応は次のように定義されています。
挙児を希望するカップルの男性パートナーに精索静脈瘤を認めた場合
現在挙児を希望していない成人男性
青少年期の精索静脈瘤
それ以外に陰嚢の痛みに関しても手術を行うこともあります。
創部と術野のイメージ
内精索静脈を血液が逆流するのが精索静脈瘤の原因とされております。
この内精索静脈を糸で縛った上で切り、逆流しないようにするのがこの手術の原理です。
では精巣から血液が流れ出なくなるが大丈夫かと疑問に思われる方もいらっしゃいますが、精巣から血液が流れ出て行く血管は他にもあり、問題ありません。
精索静脈瘤の手術には、血管を鼠径管より上で切断する高位結紮術と、鼠径管より下で切断する低位結紮術がありますが、当科では低位結紮術を行っております。(図参照)
その理由は
からです。
さらに、当科では手術用顕微鏡を用いており、動脈、リンパ管を温存でき、確実に静脈のみを結紮しますので術後陰嚢水腫の頻度が低く、術後の静脈瘤持続・再発も少なくなっています。
手術は局所麻酔で行い手術時間は片側で約1時間です。術中少し眠くなる鎮痛剤を使用する事もありますので、術後はリカバリールームで2時間ほど休んでいただき、創部の確認などを行った後に帰宅していただきます。
局所麻酔での手術に不安があるとのことでしたら、大学病院など全身麻酔で行っている施設を紹介いたします。その際は入院費、麻酔費用などが別途かかります。
男性不妊症で精索静脈瘤手術を行った場合、手術後約半数の患者さんで精子濃度または運動率の改善が見られます。
陰嚢の痛みに関しては、約半数で改善が認められますが、痛みが改善しない場合もあります。
2018年4月より顕微鏡下精索静脈瘤手術が保険適応となりました。
当院でも保険診療で手術を行いますので、自己負担は約4万円になります。
通常は手術後数日で軽くなりますが、時に数ヶ月にわたり痛みが続く事があります。
まれに再手術(止血術や血腫ドレナージ)が必要になることがあります。
創部感染や発熱を認めた場合、入院を延期して抗生剤治療を行うことがあります。
手術を行っても精索静脈瘤が消失しなかったり、手術後いったん消失した精索静脈瘤が再発することがあります。(数%)
手術後、精巣の周囲にリンパ液が溜まり、陰嚢が腫れることがあります。(数%)
精巣動脈は通常1~3本ありますが、静脈との区別が困難な場合もあり切断してしまう可能性があります。その際、術後精巣萎縮の原因になることがあります。(1〜2%)
精管は通常損傷することはありませんが、剥離の過程で損傷することがあります。切断された場合はその場で再建を行いますが、術後精液所見の悪化を引き起こす可能性があります。(1%未満)
特に説明した内容
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