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精索静脈瘤の病態と治療法について

精索静脈瘤について少し詳しく説明いたします。

まず、静脈瘤というのを簡単に説明しますと、静脈にできたコブになります。

脳動脈瘤や下肢静脈瘤の方がより有名かもしれません。

 

動脈瘤は血圧が高くなり、壁が耐えきれなくなって膨れることによってできることが多いのですが、静脈のコブは逆流によっておこります。

つまり、精巣まで行った血流がスムーズに体内に帰ってくることができずにうっ血することによって腫れてくるのです(図)。

逆流が起こっているため、当然ながら精巣の環境は悪化します。

 

特に精巣の温度が上がる事が影響していると考えられています。

精巣は熱に弱い臓器であるため、陰嚢の中の温度は体温より約2℃低く調整されています。暑い時にだらりと垂れ下がり、寒い時は縮こまって体に寄ってくるのは男性なら皆経験があるかと思いますが、そんな臓器は精巣だけですから、いかに精巣が温度に敏感か分かると思います。

 

ところが、血液が逆流してくると体で温まった血液が精巣に戻ってくることとなり、せっかくの温度調節機能が台無しです。
というわけで、治療としてはこの逆流を止める事が主目的となります。

 

 

 

図:精索静脈瘤の病態

実際の術式としては、鼠径部に2-3cmの切開をおき、精索を体外まで引き出した後、精索を開放した後、手術用顕微鏡で観察します。

顕微鏡で観察する事によって静脈、動脈、リンパ管を確認する事ができます。

確認できたら逆流している静脈を結紮、切断し動脈、リンパ管は温存します。

静脈を結紮、切断すると余計にうっ血しそうですが、確かに術直後はうっ血します。ただ、1ヶ月ほどすると血流自体が低下してうっ血が改善しますのでご安心ください。

術後は1-3ヶ月ほどで精液所見が改善する事が報告されています。

精液所見が悪いと言われた方には、精索静脈瘤が無いかどうか確認していただく事をお勧めします。

 

 


(文責:[医師部門] 江夏 徳寿 [理事長] 塩谷 雅英)

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