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精索静脈瘤手術は顕微授精の成績に影響するのか? その2

精索静脈瘤手術に関して以前、(以前の記事は下方のリンクよりお読みいただけます)

高度乏精子症の方でも精液所見が改善するということについてお伝えしましたが、精液所見が改善することで実際に妊娠率が上がるのでしょうか?

 

ということで、精索静脈瘤手術は顕微授精の成績に影響するのか? その1では

Clinical Outcome of Intracytoplasmic Sperm Injection in Infertile Men With Treated and Untreated Clinical Varicocele

(精索静脈瘤を手術した場合と手術しなかった場合での顕微授精の臨床成績)
という研究報告から、

手術を受けた群の手術前後の精液所見の変化と手術を受けなかった群の精液所見を比較すると、

手術群においては術後に精子濃度、総精子数、総運動精子数、精子形態スコアなど多くのパラメータ―で有意な改善を認め、非手術群と比べて有意に精液所見が良くなっているというお話をしました。

 

では実際、顕微授精の成績はどうなっているでしょう。

 

 

上の表では手術群と非手術群における顕微授精の結果を比較しています。

これを見ると手術群vs非手術群で比べた場合、受精率が78% vs 66%、妊娠率が60% vs 45%、出産率が46.2% vs 31.4%と有意に手術群で良い成績となっています。

 

 

 

最後に手術群において、妊娠した症例と妊娠しなかった症例を比較して、何が妊娠に良い影響を与えていたのかを推測しています。

上の表を見ると、妊娠した症例では総運動精子数が有意に多く、受精率も高いという結果でした。

このことから、やはり精液所見の改善が受精率の改善、ひいては妊娠率の向上につながったと考えられます。

ということで結論は、

・精索静脈瘤手術は顕微授精の妊娠率を向上させる。
でした。

顕微授精においては、使用する精子は数個~30個程度ですから、精子濃度を増やす必要はないと思われるかもしれませんが、精液所見が良くなるということはその中に含まれるDNAの質も改善するということですから、やはり顕微授精を受けるにあたっても精子の状態をできるだけ良くしておいた方が良いですね。
以下の記事もあわせてご参照ください。

精索静脈瘤手術は顕微授精の成績に影響するのか? その1

精液所見がかなり悪い。どうせ顕微授精? その1

精液所見がかなり悪い。どうせ顕微授精? その2
精索静脈瘤の病態と治療法について

顕微鏡下精索静脈瘤手術が保険適応になりました

 

(文責:[医師部門] 江夏 徳寿 [理事長] 塩谷 雅英)

参考情報