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男性不妊情報
「こんなに所見が悪かったら、どうせ顕微授精になるから受診しても意味ないんじゃないですか?」
婦人科外来をしていて、ご主人の精液所見が悪く男性不妊外来受診をお勧めする際にと聞かれる事があります。
果たして、特に精液所見の悪い高度乏精子症の方に対して有効な治療はあるのでしょうか?
本日は高度乏精子症に対する精索静脈瘤手術の治療効果をまとめた研究を紹介します。
Clinical Outcome of Microsurgical Varicocelectomy in Infertile Men With Severe Oligozoospermia. (高度乏精子症に対する精索静脈瘤手術の効果)
これは私が神戸大学に在籍していた2014年にUrology誌に報告した論文です。
本検討では精索静脈瘤および高度乏精子症(精子濃度500万/ml以下)と診断された方に顕微鏡下精索静脈瘤手術を行い、術前と術後のデータの推移をみたものです。
術前と術後の精液所見を比べて、(1)精子運動率が術前より改善し、(2)精子濃度が100万/ml以下なら500万/ml以上に、100-500万/mlなら1000万/ml以上に改善した場合、改善群、それ以外を改善不良群と定義しています。
上の表は精索静脈瘤手術前後での精液所見の推移をみたものです。
全体でみると、精子濃度が約5倍に、運動率は10%程アップしていることが確認されました。一方、LH,FSH,テストステロンといったホルモン値に関しては手術前後で有意な変化を認めていません。本検討では全体の41.4%の方が改善群に入っていますが、特に改善群では精液所見の改善が著しい事が分かります。
術後の平均精子濃度2340万/ml、運動率50.7%といえば顕微授精必須レベルから体外受精レベルに改善しており、大きなメリットがあると考えられます。
一方で改善不良群においては、微妙に良くはなっているものの有意な改善とは言えませんでした。
では、どのような方が改善群に入っていたのでしょうか。
次回はその解析についてお話ししたいと思います。
(文責:[医師部門] 江夏 徳寿 [理事長] 塩谷 雅英)