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男性不妊情報

精子年齢の曲がり角は何歳?

女性の年齢が上がると妊娠しにくくなるというのは一般的に広く知られている話ですが、男性の精子はどうでしょうか?

普通に考えると、徐々に悪化していきそうですが実際に何歳位から精子のどの因子に影響が出るのか調べた研究を紹介します。

 

Qian-Xi Zhuらの報告で2011年のfertility and sterility誌に報告された論文です。

“Turning point of age for semen quality: a population-based study in Chinese men”

訳すと「精液所見の年齢におけるターニングポイント:中国人の人口集団を基に」

というところでしょうか。

 

この雑誌はアメリカの雑誌ですが、中国人のデータベースを用いていますので、我々日本人に近いデータと考えて良いかと思います。

方法としては、上海在住の1010人の健康な被験者(20歳~60歳)から日にちをあけて2回ずつ精液を提供してもらい精液検査を行って、その平均を調べています。

半分は都市在住で半分は田舎在住の被験者だったとわざわざ明記してあるところに中国の地域格差が垣間見えたりします。

 

結果を見てみると、精液量、精子濃度、総精子数に関しては、各年齢群で有意な差は認められませんでした(厳密には少し低下しているものの有意な差とまではいかない)。

一方で、高速運動精子数、直進率、生存率、正常形態率に関しては年齢と共に低下していくという結果でした。

 

より詳しく見てみると高速運動精子数と正常形態率に関しては30歳まで直線的に推移して、そこから直線的に徐々に下降しています。

直進率に関しては40歳から下降するという微妙な差がありました。

 

まとめますと

・年齢が上がっても精子の数はそれほど減らない。

・精子の運動性は30歳~40歳にかけて低下を始める。

という結果でした。

 

この結果については、他にも同様の報告があり、加齢と共に精巣上体の働きが低下する事が運動性の低下につながっているという説もあります(精巣上体は精子の通り道で精子に運動性を与える部位です)。

もちろんこの結果についてはあくまで平均であり、精液所見は特に個人差の大きいものですから、心配でしたら若くても一度精液検査だけでも受診される事をお勧めします。

 

(文責:[医師部門] 江夏徳寿、[理事長] 塩谷雅英)

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