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男性不妊情報
顕微授精に際しては、卵子の質が大切なのですが、精子の質については忘れられがちというお話をしました。
前回述べたように顕微授精において理論的には精子が1個でもあれば妊娠は可能なのですが、実際のところ精液所見が悪い方においては妊娠率が低下する傾向にあります。
上の図は精子の模式図になります。精子は大きく分けて頭部と尾部になり頭部にはDNAが入っており、受精の際に卵子のDNAと組み合わされます。尾部は精子の運動を担当しており、体内で卵子に到達するまでを担当します。
尾部の手前にはミトコンドリアが入っており、尾部の運動エネルギーを保管しています。
顕微授精では精子を卵子に直接注入しますので、尾部は動いていなくても理論上は大丈夫なのですが、運動性が無かったり頭部の形が変形している精子はDNAが損傷している可能性が高く、良好な受精卵ができないため通常は顕微授精には用いません。
という事で顕微授精においては
・精子の頭部に入っているDNAが損傷していないことが重要!
・DNA損傷していない精子を選ぶため、頭部の形や動きを参考にしている。
という事です。
顕微授精であったとしても精子の質は重要という事がお分かりいただけましたでしょうか?
男性外来では精子のDNA損傷リスクを低減するために、酸化ストレスを抑制する薬剤を用たり、精索静脈瘤の手術を行ったり、禁煙、生活指導を行ったりしています。採卵日にあわせて、できるだけ精子の質が良くなるようにお手伝いできれば幸いです。
以前の記事もご参照ください。
(文責:医師部門 江夏徳寿、理事長 塩谷雅英)