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男性不妊情報
着床前診断とは、体外受精や顕微授精を行った受精卵を、移植する前の段階でいくつか細胞を採取して染色体異常が無いかを調べる検査です。
(当院の着床前診断については下記を参照ください。)
http://www.hanabusaclinic.com/about/treatment/advanced/diagnosis/
とはいえ、実際にこの検査によってどのようなメリットがあるのでしょうか?
興味深い論文がありましたのでご紹介します。
Mosaicism: ‘‘survival of the fittest’’ versus ‘‘no embryo left behind’’
(モザイク胚:「適者生存」か「ノーチャンス」か)
これはMunne氏らによって2016年にfertility and sterilityに掲載された論文です。こちらに載せられていた表が非常に分かりやすかったので紹介します。
この表では、年齢ごとに階層化して受精卵に着床前診断(PGT-A)を行い、正常胚、異常胚、モザイク胚の割合を調べたものです。
この論文では主にモザイク胚の事について述べられているのですが、本日はまず正常胚と異常胚の割合に注目して頂きたいと思います。
正常胚の割合を見ると、年齢が上がるにしたがって正常胚の割合が減り、異常胚の割合が増える事が分かります。
(一番上のEgg donorは主に20代の卵巣機能良好な卵子提供者です)
続いてこちらのグラフでは年齢階層別に着床率を見たものです。
オレンジ色のPGT-Aを行っていない群では、従来通り年齢が上がっていくにしたがって着床率が低下していくのが分かります。
一方で、緑のバーで示されたPGT-Aで正常胚と診断された群を見てみると全体的に着床率が高く、さらに年齢が上がっても着床率が落ちない事が分かります。
つまり良好な受精卵さえあれば、年齢が上がっても妊娠率は落ちない事を示す画期的なデータかと思います。
結果として、着床不全や流産のリスクを下げるという意味で、年齢が上がる程PGT-Aを受けるメリットがあるという結論になっています。
着床前診断に関しては現在次々に新しい知見が出てきており注目度の高い分野です。
過去の記事もご参照ください。
ハナブロQ&Aその7 PGT-A(着床前染色体スクリーニング)正常胚で妊娠後の出生前診断について
(文責:医師部門 江夏徳寿、 理事長 塩谷雅英)