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男性不妊情報
無精子症に対するTESEとMESA、どちらが良い? その1 その2では
MESA(顕微鏡下精巣上体精子吸引術)という方法についても紹介し、
TESEとMESAそれぞれによって得られた精子を用いた顕微授精(ICSI)の結果について調査した研究を紹介しています。
その2で示された結果は、
得られた精子の数は、意外にもMESAの方が多くの精子を回収できた。
妊娠率では47%vs30%とMESAの方が有意に高く、
同様に出産率も39%vs24%とMESAの方が有意に高いというものでした。
さらにこの研究では、妊娠にどの因子が重要かを求めるために、ロジスティック回帰分析を行っています。
上の表から、単変量解析ではMESAの方が2.0倍妊娠率が高い事が分かります。
95%信頼区間は1.22-3.29であり統計学的に有意な差といえます。
女性の年齢と卵子の数も同様に妊娠率に差を認める因子でした。
一方で新鮮精子を用いるか、凍結精子を用いるかでは有意な差はつかなかったようです。
続いて、多変量解析を行って、他の因子で補正をかけた状態で解析していますが、やはりMESAの方が有意に妊娠率が高いという結果になっています(オッズ比1.82,95%信頼区間1.05-3.67)。
結論としては、
・MESAによって得られた精子の方がTESE精子を用いるよりも妊娠率が良い。
となっています。
なぜ、MESAの方が良い結果になったのか?
その理由ははっきりとは分かりませんが、精巣上体で成熟することで、運動能の獲得以外にも胚発生に重要な機能を獲得しているのかもしれないと考察されています。
当院ではMESA、TESEどちらの手術にも対応しておりますが、どちらで良い精子が得られるかは個人差がありますので、両方同時に行う事をお勧めする事もあります。
非常に大事な手術なので、担当医とよく相談して治療方針を決定してください。
(文責:医師部門 江夏徳寿、理事長 塩谷雅英)