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多嚢胞性卵胞症候群(PCOS)の病態と治療について その2

前回、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とはどんな病態なのか、ということで、その定義や状態をお話ししました。

 

今回はPCOSをどのように治療していくのかお話をしたいと思います。

 

 

上の図にPCOSの治療の流れを示していますが、前提として肥満を認める場合はライフスタイルの改善による減量を優先あるいは並行させるとあります。

これは脂肪細胞から分泌されるエストロゲンがFSHを低下させることにより卵胞の発育を阻害して排卵しない状況を作っているため、ダイエットによりその状況を改善させようということです。

また、検査にてインスリン抵抗性があると判断される場合は、インスリンの増感作用のあるメトホルミンを用います。

これはインスリン抵抗性があると分泌されるインスリンが多くなり、これがテストステロン(男性ホルモン)の増加につながりPCOSを悪化させると考えられているからです。
肥満傾向やインスリン抵抗性の無い方で挙児希望のある方はクロミフェン(クロミッド)により排卵を促します。

多くの方はこれで治療可能ですが、中にはクロミフェン療法でも排卵しない方もいらっしゃいます。

その様な場合には、ゴナドトロピン療法(ゴナールFなど)を行ったり、、保険適応はありませんがレトロゾールが奏功することもあります。

腹腔鏡下卵巣多孔術を行うと、70%の症例で自然排卵がおこりますが、効果に永続性がない、そもそもの原始卵胞が減る、などの欠点もあります。腹腔鏡手術になると侵襲も大きいので、患者さんと相談しながら慎重に適応を決める事になります。

私は、原始卵胞が少なくなる多孔術には疑問をもっています。
クロミフェン、レトロゾール、低用量FSHで、100%排卵可能です。

そして、他の不妊原因が無く、PCOSによる無排卵が唯一の不妊原因であるならば、これらの排卵誘発を根気よく行うことで100%妊娠できると思います。
ざっくりまとめると多嚢胞性卵胞症候群(PCOS)とは

・排卵しなかった卵胞が多数ならんだ状態で、排卵障害を伴う。
・肥満やインスリン抵抗性のある場合は、まずその改善を行う。
・妊娠を望んでいいる場合には、排卵を促す治療を行う。

でした。

一言でPCOSといっても病態には個人差があり、治療法も異なってきますので分からない点などありましたらお気軽に担当医に聞いてみてくださいね。

 

前回の記事もご参照ください。

多嚢胞性卵胞症候群(PCOS)の病態と治療について その1

 

(文責:医師部門 江夏 徳寿、理事長 塩谷 雅英)

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