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男性不妊情報

周期によって変わる受精卵の状態 その1

先日、胚盤胞の染色体正常率は年齢とともに下がっていくという記事(着床前診断によって得られる情報で何が変わるのか?)を紹介いたしましたが、年齢が上がってきても妊娠される方はいらっしゃいます。

それでは、同年代間や同一人物の別周期で染色体正常率はどれくらい違うのでしょうか。

今回はそのテーマに沿った研究を紹介いたします。

Intra-age, intercenter, and intercycle differences in chromosome abnormalities in oocytes.

(同年代間の施設別、周期別にみた染色体正常率の違い)
この研究はアメリカ、ドイツ、イタリアの研究者によって2012年にFertility and Sterility誌に発表された論文です。

この研究ではドイツとイタリアの施設で体外受精もしくは顕微授精を行った226人を対象に調査しています。初期胚の極体を採取し、着床前診断(PGT)を行い、正常染色体の卵子が得られた割合と個数を調査しています。

 

 

上の表は各年齢層における染色体正常胚の割合になります。

イタリアとドイツを比べてみるとイタリアの方が圧倒的に正常胚率が高い事が気になります。

その理由は、イタリアの施設で行われているPGTでは染色体全部を調べている訳ではなく、13,15,16,18,21,22番染色体のみ調べているため、他の染色体異常は見ていないからのようです。

そんな微妙なPGTデータも一緒に解析する事には疑問がありますが、この研究の主眼は1周期目と2周期目を比較することですので、良しとされているようです。
結果を見てみると、当然ながら34歳以下の群から35-39歳、40歳以上と年齢が上がるにしたがって正常胚率は下がっています。ただ、同時に()の中で%表示されている部分、上位1/4と下位1/4の範囲を見ると同年代でも正常胚率にかなりバラツキがあることが分かります。さらに、1周期目と2周期目を比べてみても、-80%~100%ですから同一人物でもかなり差があると考えられます。

 

では、得られる正常胚の個数が周期によってどのような差があるのか、ないのかについても見てみます。

その結果は次回に紹介させていただきますね。

 

(文責:医師部門 江夏徳寿、 理事長 塩谷雅英)

参考情報