"

男性不妊情報

卵巣予備能の指標、AMHとは。AMHでわかること

「卵巣予備能の指標、AMHとは。」シリーズで、

The physiology and clinical utility of anti-Müllerian hormone in women (AMHの生理と臨床上の有用性について)
というレビュー論文をご紹介しています。
3回目の今回は、AMHの値で何がわかるのかというお話をしたいと思います。(過去2回の記事は下方のリンクからお読みいただけます)

 

上の図はAMHと成熟可能な原始卵胞数の推移を示したグラフになります。

成熟可能な原始卵胞数とは解釈が難しいですが、ざっくりと残存卵子数と考えて良いかと思います。

これをみると、卵子数は多いものの成熟が不安定な思春期ではAMHは不安定な上昇を見せており、残存卵子数との相関も今一つですが、25歳以降では非常によく相関していることが分かります。

 

 

 

最後に卵子のステージとAMHの関係について示した図になります。

ピラミッド型の図では、卵子が原始卵胞から1次卵胞、2次卵胞、前胞状卵胞、胞状卵胞に育っていく過程で選別されて数が減っていく事を示しています。

採血で測っている血中のAMHは、このうち前胞状卵胞と胞状卵胞(もしかしたら2次卵胞も?)から分泌されており、これらの細胞の数を反映すると考えられています。

エコーで確認できるのは胞状卵胞以降ですから、AMHはエコーでも見えない前胞状卵胞の数も含めて予測できるというメリットがあります。

 

ちなみに、右の図で赤で囲った台形の部分はPCO(多嚢胞性卵胞)の状態です。

以前ご紹介しましたがPCOでは卵胞が排卵せず、途中まで成熟した状態の卵胞が多数見える病態です。(以前の記事は下方のリンクよりお読みいただけます)

この様な状態では当然AMHがたくさん産生されますので、AMHはPCOを予測するという意味においても重要なマーカーという事になります。
まとめますと、AMHは

・卵巣予備能を予測するのに有用なマーカー
・高ければ卵巣予備能が高いと考えられるが、PCOには注意
という事でした。
治療方針にも大きく関わるマーカーですので、是非覚えておいてくださいね。
関連の記事もご参照ください。

卵巣予備能の指標、AMHとは。AMHができる場所

卵巣予備能の指標、AMHとは。月経周期とAMH

多嚢胞性卵胞症候群(PCOS)の病態と治療について その1

多嚢胞性卵胞症候群(PCOS)の病態と治療について その2

凍結融解単一胚移植の場合、AMH値だけでは妊娠出産の可能性を推測できない

『ハナブロQ&A』 その17(AMHが高いですが自然妊娠は?)

 

(文責:[医師部門] 江夏 徳寿 [理事長] 塩谷 雅英)

参考情報