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男性不妊情報
体外受精と顕微授精どちらが多く選ばれていて、その結果はどうなのかという観点から調査した研究をご紹介しています。
この調査では、1996年から2012年の間にアメリカで体外受精および顕微授精を行った方、1395634周期(約140万周期!)のデータを解析しています。
その1 では体外受精と顕微授精それぞれの主なメリット、デメリット、それから、顕微授精のトレンドは増加傾向にあるということをお話ししました。
そして、その2では体外受精と顕微授精での結果に違いについて、男性因子がある場合には体外受精だと移植に至らない率(キャンセル率)が高くなる結果を紹介しました。
では、男性因子がない場合はどうでしょうか。
上の図は、男性因子がない症例における結果の比較です。
これを見ると男性因子ありの場合と違い、キャンセル率は変わらないという結果でした。
つまり、男性因子が無い場合は、体外受精でも顕微授精でも胚発生率が変わらないと考えられます。
一方で着床率、妊娠率、出産率に関しては顕微授精よりも体外受精の方がやや良いという結果になっています。
では、男性因子が無い方に関しては体外受精の方が良いのかというと、そこは難しいところで、この調査もランダム化試験ではないため、顕微授精の方によりシビアな症例が多く含まれている可能性もあるかと思われます。
なので、この論文の結論としても、男性因子がない症例に関しては顕微授精のメリットは認めなかったと結論付けられており、近年の急激な顕微授精の増加に対して再考を促す内容となっています。
まとめますと
・男性因子がある場合においては、顕微授精の方が成績が良い
・男性因子が無い場合については、顕微授精のメリットは明らかではない
でした。当院では、基本的に当日の精液所見を参考にして体外受精と顕微授精どちらをお勧めするか決定しています。
迷う場合はスプリット法といって得られた卵子を半々にして受精させる方法もあります(6個採卵できたら3個、3個)ので、よく相談して決定されることをお勧めします。
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(文責:[医師部門] 江夏 徳寿 [理事長] 塩谷 雅英)