"
男性不妊情報
体外受精や顕微授精を行う際には採卵時に多くの卵子を得るために卵巣を刺激するホルモン治療を行います。
(当院の排卵誘発法については下記を参照ください)
http://www.hanabusaclinic.com/knowledge/2008/11/18/p_8/
この刺激によって卵胞が発育し、多くの卵子を得ることができるようになるわけですが、強力なホルモン刺激によって逆に1個1個の卵子の質が悪くなることは無いのでしょうか?
その様な疑問に答える報告をご紹介します。
Array CGH analysis shows that aneuploidy is not related to the number of embryos generated
(着床前診断における正常胚の割合は受精卵の個数とは関係しない)
これは、カナダのAta氏らの報告で2012年のReproductive Biomedicine Onlineに掲載されています。
この論文では990人の患者さんを対象に7753個の受精卵に着床前診断(PGS)を行い正常胚の割合を年齢と受精卵の個数によって階層化して比較しています。
上の表は初期胚で着床前診断を行った群の結果になります。
横軸に年齢別階層と比較対象として卵子提供者の群も作ってあります。卵子提供者は35歳以下で卵巣機能良好な方たちが選ばれています。
縦軸は、受精卵個数によって1-4個、5-7個、8-10個、10個以上と群分けしてあり、それぞれ着床前診断正常胚の割合と、1個以上正常胚が得られた方の人数と割合が示されています。
これを見ると、正常胚の割合は年齢が上がる程に下がっていくのが分かりますが、同じ年齢層で見ると受精卵の個数が増えても正常胚の割合は変わらない事が分かります。
結果として、1個以上の正常胚が得られる割合は受精卵の個数が多いほど高くなることが分かりました。
同様の結果は胚盤胞で着床前診断を行った群でも得られており、結果として正常胚が得られる割合は年齢には関係するが、受精卵の個数には関係しない。という結論になっています。
という事で、採卵時はできれば多くの卵子を得ることが重要であると考えられると思いますが、そこには副作用とのバランスや個々人の卵巣予備能によるホルモン治療への反応の違いなども関わってきます。
その辺りのバランスを考えて採卵個数をどの程度にするのが理想的かについての記事も以前ご紹介したので併せてお読みいただければと思います。
(文責:医師部門 江夏徳寿、理事長 塩谷雅英)