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がん患者さんの妊孕能保存のためにできること その2

前回、がん患者さんの妊孕能保存のためにできること その1では、

若年性のがん治療に関しては、最近ではがんが治った後の事も考えて治療する事が主流になってきていて、

女性の場合は抗がん剤治療の前に卵巣自体を摘出して凍結するという方法がとられることがあるというお話をしました。

 

抗がん剤治療が終了し、がんが根治した事が確認できたら、凍結していた卵巣を自家移植する事になります。

今回は、移植された卵巣がどのように働いて妊孕能を回復するのか、報告されている症例報告の一例をご紹介したいと思います。
Four spontaneous pregnancies and three live births following subcutaneous transplantation of frozen banked ovarian tissue: What is the explanation? (凍結卵巣の皮下移植後に4回自然妊娠し、3回出産した症例:どう説明すればよいのか?)

これはアメリカのOktay氏らが2011年のFertility and Sterility誌に発表した症例報告です。

紹介されている患者さんは28歳時にホジキンリンパ腫と診断され、抗がん剤治療と放射線治療を行ったけれども、がんが根治していないということで、より強い抗がん剤治療を行う前に腹腔鏡で左卵巣を摘除し凍結保存しています。

強力な抗がん剤治療と骨髄移植の後、がんは根治しましたが、卵巣機能は失われ月経も止まってしまいます。

 

抗がん剤治療終了から2年半後に女性は凍結していた卵巣を下腹部の皮下に移植しています。

 

女性はその後半年で月経が回復し、4回の自然妊娠を経て3回出産しました。

 

次回、もうすこしこの症例のことを詳しく見てみたいと思います。

 

以前の記事もご参照ください。

がん患者さんの妊孕能保存のためにできること その1

 

(文責:[医師部門] 江夏 徳寿 [理事長] 塩谷 雅英)

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