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男性不妊情報

男性の精液所見に悪影響を及ぼす生活習慣は何か?

男性不妊の診療をしていて、よく質問される項目として、「精液所見を良くするためには何に気をつければいいでしょうか?」という質問があります。

 

 

その答えに関する研究報告を紹介したいと思います。

 

Ying Liらの報告で2011年にfertility and sterilityに掲載された論文です。

Association between socio-psycho-behavioral factors and male semen quality: systematic review and meta-analyses.

訳すと

”社会、心理、行動的要素と精液所見の関係:メタ解析の結果” というところでしょうか。

(メタ解析とは、別々に行われた複数の研究の結果を統合し、より高い見地から分析することをいいます。一般的には質の高い根拠が得られるといわれています)

 

さて、この論文では57の論文(26カ国)に含まれる29,914名の被験者データのうち、年齢、body mass index; BMI(肥満の指標)、心理的ストレス、喫煙、アルコール摂取、コーヒー摂取について精液所見との関連を調査しています(他にも調査された項目はありますが、サンプル数不足で除外になっています)。

精液所見は精液量、濃度、総精子数、運動率、正常形態率といった項目について調査しています。

 

結果として、一番精液所見に影響を及ぼすと考えられた因子は喫煙でした。

喫煙者と非喫煙者を比較すると5つの項目全てで有意な差を認めており、精子の質、量ともに低下させると考えられました。

 

続いて、加齢と精神的ストレスは運動率や正常形態率といった質の部分で主に影響しているという結果でした。

また、アルコール摂取群は精液量が少ないという結果でした。(アルコールの量については特に定義されていません)

 

一方で、肥満の指標であるBMIやコーヒー摂取は精子に特に影響しないという結果でした。

 

 

ということで、皆さんもご存知だったとは思いますが、妊活中は禁煙しましょうというのは医学的に根拠がある事であることを再確認していただければ幸いです。

 

加齢とストレスについては、なかなか対策が難しい所がありますね。加齢はもちろん、ストレスも貯めようと思って貯めている人はいませんからね。ただ、精子に影響があるという事だけ頭に置いていただければと思います。

 

アルコールについては精液量が少なくなるという報告でしたが、他のファクターが悪くなっていないので、喫煙程は悪くないようです。

ただ、実際にどれくらいの量を飲んでいたら精子に悪影響があるのか?この報告では分かりませんね。

これは個人差が大きそうですが、その様な研究があったらまた報告したいと思います。

(文責:医師部門 江夏徳寿、理事長 塩谷雅英)

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