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男性不妊情報
男性におけるクロミッドの使用について報告した下記論文の紹介 第2回目です。
Enclomiphene citrate stimulates testosterone production while preventing oligospermia:
a randomized phase II clinical trial comparing topical testosterone
(クロミフェンは乏精子症を防ぎつつテストステロンの産生を刺激する。経皮テストステロン製剤との比較によるフェーズⅡ試験)
対象者は男性ホルモン(T;テストステロン)が低い男性(<300ng/dl)124名で、
クロミッド12.5mg群、クロミッド25.0mg群、経皮テストステロン群、プラセボ(偽薬)群の4群にランダムに分けて調査しています。
調査対象となった項目は薬物投与前後の血中LH、FSH、T値および精液所見の4項目です。
前回(男性にも排卵誘発剤!? 男性に対するクロミッドの効果)ではこの研究対象となった方の背景をお話ししました。
平均年齢は50歳位と高め。
乏精子症の方はクロミフェン12.5mg群で5人、25mg群で1人、経皮テストステロン群で6名、プラセボ群で2名と少なめ。
ということでした。
今回は、クロミッドやテストステロンを投与することで各項目はどのように変化するのかその結果です。
治療前後のホルモン値の推移をみてみると、トータルテストステロン(TT)はクロミフェン12.5mg群、25.0mg群、経皮テストステロン群のいずれでも上昇しています。
一方でFSH、LHに関してはクロミフェン群で上昇を認めるものの、経皮テストステロン群では逆に低下しています。
これは、直接テストステロンを投与したために脳下垂体が、これ以上は精巣を刺激する必要がないと判断しFSH、LHの分泌を抑制したためと考えられます。いわゆるネガティブフィードバックというやつですね。
プラセボ群では偽薬しか使用していませんので、全てのホルモン値において治療前後でほとんど変わりません。
最後にFSH、LHが正常下限を切った割合と乏精子症の割合をみています。
これを見ると経皮テストステロン群ではFSH、LHともに正常下限を切る割合が50%程になっており、乏精子症の割合も3倍に増えています。一方で、クロミフェン群では乏精子症の割合が少し減っているようです。
とはいえ、データ数が少ない為、これをもってクロミフェンが乏精子症を改善させるとまでは言えないでしょう。
この論文の結論としては
・クロミフェンは、低テストステロンを改善させ、LH、FSHも上昇する。
・経皮テストステロンは低テストステロン自体は改善させるが、LH、FSHが低下し乏精子症を引き起こす。
となっています。
乏精子症に対するクロミフェンの効果はまだ確定していないのが現状ではありますが、テストステロンは精子形成に必要不可欠なホルモンであるという点から、低テストステロンを伴う乏精子症患者には効果があるだろうという考え方が主流となっています。
同様にレトロゾール(フェマーラ®)が効果的であるという報告もあり、今後の動向を注視していきたいと考えています。
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(文責:[医師部門] 江夏 徳寿 [理事長] 塩谷 雅英)