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男性不妊情報
体外受精を行う際は原則として当日朝に射精して得られた精液を持参して頂き用いていますが、出張などでその日に精液が得られない場合は事前に精液を凍結して頂いて当日に融解して用いる事があります。
もともと精液所見が良い方なら問題ありませんが、精液所見が悪い方においては凍結と融解によって精子がダメージを受け妊娠率が下がらないか心配になるところです。
その事について実際に調べた研究をご紹介します。
Does cryopreservation of sperm affect fertilization in nonobstructive azoospermia or cryptozoospermia?
(閉塞性無精子症や高度乏精子症において精子凍結は妊娠に影響するか?)
本研究はイスラエルのShachter氏らが2017年のFertility and Sterility誌に発表した論文です。
この研究では103人の非閉塞性無精子症の方と171人の高度乏精子症の方を対象に調べています。
上図は高度乏精子症の方の射出精子をそのまま用いた新鮮精子群と、一旦凍結して用いた凍結精子群を比較したものです。
まず運動精子のいた割合をみると96.4% vs 87.9%で新鮮精子の方が高くなっており、凍結、融解の過程でいくつかの運動精子は死んでしまったと考えられます。その影響か受精率も64% vs 55%と新鮮精子の方が有意に高くなっています。
同様に妊娠率、出産率も新鮮精子の方が高くなっていますが、対象の数が少ないため統計学的有意差は出ていません。
本研究では無精子症患者において精巣内精子採取術(TESE)によって得られた精子についても検討しています。
次回はその結果と、それらを踏まえた結論についてお話ししたいと思います。
(文責:医師部門 江夏徳寿、理事長 塩谷雅英)