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男性不妊情報
喫煙が精子に良くないという事は直感的にも分かりやすいと思います。
では実際どれくらい悪いのでしょうか?
本日は、喫煙が精子に与える影響が数字で分かる研究をご紹介します。
Cigarette Smoking and Semen Quality: A New Meta-analysis Examining the Effect of the 2010 World Health Organization Laboratory Methods for the Examination of Human Semen. (喫煙と精液所見:2010年WHO基準を用いたメタ解析)
(メタ解析とは、別々に行われた複数の研究の結果を統合し、より高い見地から分析することをいいます。一般的には質の高い根拠が得られるといわれています)
こちらは地球の裏側ブラジルのSharma氏らが2016年にEuropean Urology誌に発表した論文です。
この研究では5865人の対象者を含む20本の論文を対象に解析を行っています。
上の表は喫煙者と非喫煙者の精液所見をまとめたものです。青で囲った〇の部分を見てみると、精子濃度は喫煙者において8.92百万/ml減少しています。
さらに、不妊患者に限ると11.29百万/mlも減少しており、精子予備能が低い方により顕著に影響が出ると考えられます。
同様に運動率は4.78%、精液量は0.21ml、正常形態率は1.37%といずれも喫煙者の方が有意に悪くなっています。
また、この表には載っていませんが喫煙の本数が多い方がよりダメージが多いというサブ解析の結果も出ています。
逆に言うと、本数を減らすだけでもマシではあるという事が言えるかとは思いますが、本研究の様な精子の数や運動率など目に見えるパラメーター以外にも精子のDNA損傷が増えるといったような目に見えないダメージを与えているという報告も散見されますので、一見精液所見が良くても油断は禁物です。
ということで、結論は
・喫煙は精子のすべてのパラメーターに悪影響を与える。
・特にもともと精液所見の悪い方では濃度が1千万/ml以上も減少する。
でした。
タバコ税も値上がりしている昨今。これを機に禁煙に再トライしてみてはどうでしょう。どうしても難しければ、禁煙外来を紹介する事もできますのでお気軽にご相談ください。
(文責:医師部門 江夏徳寿、理事長 塩谷雅英)